2017年11月24日

怖くなりそうな小説2908

 動けない私に、それは確実に近づいてきた。怖くて見ることができない。これから私はどうなるのだろう。いや、ただの夢なのだから、どうなっても無事なはずだ。けれど、それでも怖い。その音の響きが、少しずつ近づいてきて、そして、私の前まで来たところで、止まった。思わず私は目を強く瞑り、体を固くする。けれど、そのまましばらくじっとしていても、何も起こらない。恐る恐る私は目を開けた。音はもうしない。何かが動く気配もない。目の前まで何かが来たと思ったのだけれど。私は手にしていた灯りを前方にだし、そのまま前に進んで、何もないのかと確認しようとして。そして思わず手を引っ込めた。地面に、何かが見えたのだ。でも動いている気配はやはりない。恐る恐る灯りをそちらの方に近づける。それは岩のような物体だった。おそらく、岩でできた足のような形で、2本立っている。少しずつ上の方を見ていくと、それは人の形をした岩だった。体も腕もある。顔の部分には目や口などはないけれど、顔のようないびつな楕円型の岩がくっついている。それが動かずに立っているのだ。動かないことに少し安心して、私は他の方向も見てみた。やはり私の周りから足音が近づいてきていたのは確かなようで、私はその岩の人間に囲まれているようだった。それぞれの間にそれなりの隙間はあるから、ここから出ることはできる。でもそうすべきなのか、ここにいた方がいいのか。と、その時。今度はまた別の音が聞こえた。ズルリズルリと、はいずるような音が。
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2017年11月23日

怖くなりそうな小説2907

 そうと分かっても、やはり何もせずにこの暗闇の中で待っているというのは苦痛だった。傍に灯りがあるとはいえ、自分の周りがわずかに明るいだけで、景色は相変わらず真っ暗なのだ。もっともさっきまでの明かり冴えない状況と比べればいくぶん気分はましだったけれど。そして。もしここが夢なのだとしたら、何かが起こってほしいという私の気持ちが影響したのだろう、何か遠くから、響く音が聞こえ始めたのだ。最初は小さくて気のせいかと思ったけれど、それは断続的に続いていて、少しずつ大きくなってくる。そう、その音を立てている何かが少しずつこちらに近づいてきているのだ。ズシンズシンという響くような音が少しずつ少しずつ。何か大きな生き物の足音のような。音のする方を見ても、何も見えないけれど、やはり何かがいるような気はする。そしてそれはとても大きなもののように感じる。逃げるべきだろうか、と思った。そして、逃げようと思った。明かりを持って逃げよう。きっと逃げているうちに目が覚めるだろう。そう思って立ち上がった時。反対側の方からも音が聞こえてきたのだ。いや、反対側だけでなく、あちこちから。私はその音を立てている何かに囲まれているようだった。そしてそれは近づいてくる。どちらからも音はしていて、逃げることはできないようだった。確かに何かが起こるのを願ったかもしれないけれど、怖いことが起こってほしいというわけではなかったのに。私はそこに立ちすくむしかなかった。
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2017年11月22日

怖くなりそうな小説2906

 そうして歩き続けて、私はそこにたどり着いた。それは、ただの小さな灯りだった。遠くから見たらとても明るいように感じたけれど、近づいてみるとそれほどでもない。ただ、両手で抱えるくらいの大きさの球が、明るく光っているのだ。そしてその周りは、まるで昔のコンピュータグラフィックスのように、真っ白な何もない平面だった。それで私は、ここがどういう場所なのかというもう一つの可能性に気づいた。ここは夢ではなく、作られた場所なのではないか。何らかの不具合が起こって、私はコンピュータの中に入ってしまったのではないだろうか。仮想空間、仮想現実の中に閉じ込められてしまったのではないか。原因は分からないけれど。この研究所ではそれに近い研究もしているから、可能性もなくはない。実際、仮想空間と脳を繋ぐ研究で、被験者の意識がなかなか戻らずちょっとした騒動が起こったことがある。あれと同じ状況になっているのではないか。でも、そうだとしたら何故だろう。少なくともあれは、脳に装置を繋いで、被験者をこん睡させ、その上で起こったことだ。私はそんな実験など受けていないし、そもそもその実験にも関わっていない。なぜこんなことになったのか、結局わからないのだ。結局ここから逃げ出すには、現実に戻るには、私にできる事は、待つことだけのようだった。現実の世界で、きっと周りの人間がこの事態を解決するために動いてくれている。そう信じて待っているしかないのだ。
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