2020年06月06日

怖くなりそうな小説3833

 その日から、僕は日記を書くのにはまるようになった。もちろん昼間は仕事に行くし、その間僕の中が切り替わっているのはこれまでと変わらないのだけれど、気のせいか、切り替わった状態でいる時間は少しずつ短くなっているようだった。僕は一日の終わりだけでなく、朝仕事に行く前も日記を書くようになった。起きてから家を出るまでのことを細かく書いたり、時には覚えている範囲で夢の内容を書いたりもするようになった。特に夢の内容は突飛な夢を見ることもあり、書いていて楽しかった。朝書いた後の余韻や、早く帰って日記の続きを書きたいという気持ちが、僕の切り替わった状態になっている時間を短くしているのだろうと思った。実際、長いときは、朝起きて顔を洗った後から、家に着いて夕食を取り終えるくらいの時間まで切り替わった状態だったのが、最近はそんなこともなく、短い時には、会社についてからしばらく経ってから切り替わり、終業の時間が来る数分前には元の僕に戻っていることもある。さらに僕は、元の状態に戻っている場合に限ってだけれど、帰り道で寄り道をしてみるようになった。そんなに大きな寄り道ではないけれど、例えば帰り道にあるいつもあまり行かないお店に入ってみたり、帰るのにいつもと違う道を通ってみたり、そんな変化をつけてみた。他にも、ただぼんやりと周りを見るのではなく、見たものについて考えるようにしてみたり。それもこれも全ては日記に書くためだった。日記に書くことが増えるのがなんだかうれしいのだ。
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2020年06月05日

怖くなりそうな小説3832

 そうして、一通り昨日一日の行動を書き終わり、なんとなく文字数を調べてみると、二千文字にもなっていた。改めて最初から見直すと、ただとにかく何をしたかが書いてあるだけで、読んでいても全く面白くない。けれどそれでも妙な満足感があった。もしかしたら、書くという行動自体にはあまり意味はなく、自分のことを記録するという事に意味があったのかもしれない。何もないいつもと同じような一日が、こうやって日記にして記録しただけで、何か意味があるような、そんな気持ちになれるのだ。そこでさらに僕は、一昨日のことも書いてみることにした。一昨日も同じように仕事をしていただけだから、ほとんど同じような内容になる。ただ、何時くらいに休憩をしたかだとか、何を食べたかだとかは違っている。そうした些細な変化でさえ、こうやって記録しているとなんだか満足感があって、何か以前よりも自分が意味のある存在になれているような気持ちになった。結局、思い出せる限りの日までさかのぼって日記をつけて、そうして気が付くと、書きはじめてから3時間近く経っていた。ただひたすら文章を書いていただけだったけれど、ものすごく充実感があって、しかも、まだまだ続けたいとさえ思った。そこで今度は、既に書いた日記を読み返しながら、その時の感情をできるだけ書き加えてみることにした。例えば、食事がおいしかったとか、仕事が疲れたとか、ほんの些細な事ばかりだったけれど、それでも書くことによって、僕の人生がなんだかとても意味のあるもののように思えてくるのだった。
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2020年06月04日

怖くなりそうな小説3831

 休みの日に淡々とできるような、でもそれが何かを生み出すような、そんなものがないかと考えてみたのだけれど、なかなか見つからなかった。手芸品のようなものを作ることも考えてみたのだけれど、僕にはそういうものを作る才能はない。一応ネットで調べてみたりはしたのだけれど、どれも難しそうで、やる前から諦めてしまった。そうして、最終的に思いついたのが、文章を書くという事だった。いい感じにまとまれば、一つの小説を生み出せるかもしれない。まとまらなくても、何かを生み出しているという感覚は得られるだろうし、書いた物がいつか何かの役に立つことだってあるかもしれない。それに、文章を書く力が上がれば、自分自身の未来にも何か役立つだろう。僕はパソコンを立ち上げ、文章を書くソフトを起動した。真っ白な画面に、ふと思いついた文章を書いてみた。それをしばらく見つめた後、全部削除する。まず何を書くか決めなくてはならない。といっても、書きたいことが何かあるわけでもない。少し迷ってから、僕はとりあえず日記を書くことにしてみた。少なくとも事実を書いていくことにすれば、書くことはあるし、その中で何か思ったことなどを書いていれば、それなりの形になるのではないかと思ったのだ。まず、昨日の事を書くことにした。昨日は仕事に行っていたから、朝何時頃に起きて、何時くらいに家を出て、通勤して、と順に書いていくと、とりあえず白い画面は文字で埋まっていく。内容は大したことはなかったけれど、なんだか少し気持ちが良かった。
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