2017年02月23日

怖くなりそうな小説2634

 そしてずっと、何も起こらず、何も生まれなかったのだけれど。まるで人が突然病気になる時みたいに、私は突然、ほんの小さな一部に、疼きを感じた。それは次第に少しずつ少しずつ大きくなっていき、もぞもぞと動くようになっていった。完全な暗闇の中だったけれど、私はそれの形を感じることができた。それは生きものとは言えない、シャボン玉のような、けれどそれでいて固いような、そしてシャボン玉とは比べ物にならないほど小さな、そんな何かだった。それは体をくねらせるようにして動く。そしてそれは最初は一つだけだったのだけれど。ある時、その体が細長く伸びていき、そしてちぎれた。千切れたその二つの塊は、それぞれ別々に動き始めた。別々の方向に。さらにそれぞれはそれぞれのタイミングで分裂していって、それは少しずつ増えていった。次々に増えていく。それはうまいこと、ぶつからないように移動している。ぶつからず、どんどん広がるように少しずつ少しずつ増えていき。そしてあるとき初めて、分裂した塊の二つが、ぶつかった。ぶつかった二つは、今度は離れなくなった。そして最初はくっついたまま、それぞれが別々に動こうとしていたのだけれど、おそらく力関係の差があったのかもしれない、次第に片方の動きが優先されるようになっていった。もう片方は最初はそれに対して何もしなかったけれど、次第に、その動きに協力するようになり、その結果、その移動の速さが、他の塊よりも早くなったのだった。
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2017年02月22日

怖くなりそうな小説2633

 だから私は。もう、ここを居心地の良い場所に変えてしまうことがせめてものできる事だった。つまり、この暗闇の中でいつまでも生きていられるように、耐えられるような場所にしようと、いや、場所というよりも、この状況の受け入れ方に関する思考に切り替えようとした。もう前を見ることも、後ろを見る事さえもできないのだから、それなら、何も見ずに、ただ自分を、この暗闇の何もないところで、保っていくために、自分をこの暗闇と一体化させてしまおう。そう、自分自身が暗闇になるのだ。暗闇になって、溶け込み、何もなくなる。私は暗闇の中にいて、暗闇は私の中にあって、その暗闇はどこまでも広がっていて、私も一緒にどこまでも広がっている。何かを覆っているわけでもなく、何かに覆われているのでもなく、ただ、星の無い宇宙のように、どこまでも広がっている。そこに必要なものは何もない。何も考える必要はなく、何かしないことがあるわけでもなく、ただそこに存在するだけの存在。宇宙で地球が生まれたように、もしかしたらこの暗闇の中でも、いつか何かが生まれるかもしれない。でもそれを期待するわけでもなく、拒むわけでもなく。私はただそこに存在するだけで、何も考えずただ暗闇の中の世界を見ている、というよりもその世界を知っているだけの存在。この暗闇の中で、この私の中で、何が起こっても、何かが生まれたとしても、私は何も喜ばず悲しまず、ただそれを、知るだけの存在なのだ。
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2017年02月21日

怖くなりそうな小説2632

 それなのに、思い出してしまった。私にはもう闇しかない。ただ暗いというものではなく、闇だった。前なんて見えない。後ろさえ見えない。どこに行けばいいのか分からないし、一歩進めばそこには地面がないような気もする。身動きが取れないのだ。妄想の中でさえ。せっかく自由にできるこの頭の中でさえ。少しでも動くと、この闇の中でまっさかさまにどこかに落ちていきそうで、とても怖い。でも、こうやってじっとしていることでさえ怖い。動いてはいけない、と頭が体に命じている。意識というよりも、それは本能だった。そもそも忘れようとしたのも、こうならないための本能だったのだろう。でも。私は、そもそもこの闇の原因は何だったかを改めて思い出し、そして心の中で解決してしまおうと、決して動かずに、考えた。人に裏切られた、あの苦しみ。何故裏切られたのか。自分が悪かったのだろう。相手も悪かったかもしれないけれど。でも。もう、そんなことは関係がないのだ。その苦しみが解決したとしても、過去のものとなって今に影響しなくなってしまったとしても、それはもう関係がないのだ。そう、そんなことは関係なしに、暗闇は私を襲ってくる。一度生まれてしまった暗闇は、もう二度と消えることがない。隠したり忘れたりしようとして、そうできた気になっているだけで、一度生まれてしまったそれはいつまでも心の奥底に残ってしまう。そして、何かのきっかけでそれが広がり始めると、全ては暗闇に覆われてしまうのだ。
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